人間は表現をすることに対しても大切にしてきていたといえるかもしれません。紀元前の人間にとっても壁画や漆に対して、人は色を求めていた可能性があります。色に関して言えば、特に赤い色は神聖視され特別な思いがあったと思われます。紀元前十数万年にかけての旧人類は赤土(酸化第二鉄)で身体彩画をしていたと言われています。

赤鉄鉱、黄土、マンガン鉱、白亜土、骨を焼いた黒顔料に獣脂や血液に混ぜて描いたものなど、紀元前ですでに沢山の塗料が使われていた可能性があります。この頃が塗料の始まりと言えるのではないでしょうか。さらに古代エジプトにはカーボン、赤土、黄土、石膏、ラピスラスリなどを使った墳墓内の壁画が残っていると言われています。乾性油や腰、卵白などを結合材に用いるようになったのはこの頃よりも少し後だと思われます。鮮やかな赤顔料である丹砂(辰砂)は秦の始皇帝の時代に兵馬備でも使われていたとされています。

ところで漆は天然の塗料で、実はどこからがルーツとなっているのかよくわかっておりません。国内の貝塚遺跡からは縄文前期頃の赤・黒漆が塗られた櫛と見られる遺物が出土していると思いきや、中国の遺跡からは黒漆の上に赤漆が塗られた見事な椀が出土しています。

そして、近年、国内の別の遺跡から約9000年前の朱塗りの埋葬品が出土したと言われています。日本では漆は什器、工芸品、建築に幅広く用いられてきた塗料です。

ヨーロッパでは乾性油による油絵具が広まるのはおよそ15世紀前半からであり、ボイル油(乾性油に空気を吹き込みながら加熱したもの)を用いた油性塗料が出現するのは18世紀中頃だと言われています。